UPQの液晶詐欺事件は悪なのか?

私は中華製品が好きだ。

gearbestとか超好き。今も旅行に持ってくビデオカメラを物色している。GoProのパクリみたいなやつ。4Kで手ぶれ補正付いたのがいいな。リュックのベルトに取り付けて自分の見たものを取りっぱなしにする予定。

ソニーのものだからちょっと違うがこれ。

f:id:i10aki:20170502120504j:plain

 バックパックマウントと言うらしい。本来はハイキングなどに使う用とだけど、これでヨーロッパの街歩きして、早回しで短縮するとおもしろそうだなと思って1万円くらいで探している。

 

いっぱいあって探すのが楽しい。

中華ガジェットの魅力は安さと豊富さ。勿論ご想像通り、買った後のトラブルはつきものである。

 ええ、これ絶対スペック表通り出てないだろ・・・・。

 サイズ違うんだけど・・・・。

 色違う・・・・。

 壊れてる・・。

 2か月でまだ届かないのか・・・・。

 あ、関税発生した。配達員が請求書持ってる・・・。

 

問題は何か起こる。

今度は何かなー??位の勢いで挑まないとやられる。関税は中国が悪い訳じゃないけど、ビビる。

覚悟が必要だ。

※gearbestは日本人相手の商売に慣れてるので比較的マシです。


それでも、私は中華製品が好きだ。

何というか、勢いがある。

勢いがあって、面白い製品が多く、更に商品サイクルが非常に速いのだ。新し物好きには最適である。楽しい。勢いで作ってるから、品質は最低でゴミも多いけど、勢いが楽しいのだ。完璧に計画した旅行も楽しいけど、勢いで出かける旅行も楽しいじゃない。結果はどうせグダグダになると判ってても、何かビックリするような体験ができることもある。と言ったらわかるだろうか。

 

 

 

日本で正規品を買おうとすると、選択肢が少ない上にべらぼうに高い。

上に出したアクションカムだと実質GoProとSONYの二択。パナとかニコンとかリコーとかあるけど、さらに高い。裏表両方とれるカメラとか素晴らしいけど、最早それ求めてるアクションカムじゃないから・・・。求めてるものが違う。なので絞っていくと結局GoProかSONYになる。

しかし高いのだ。

勿論どうしても必要なら、気にせず買える程度の価格ではあるのだけど、自転車やカバンに括り付けて取りっぱなしにしたら面白くね?とりあえず試してみよ。くらいにしか思ってない適当な用途で、3万円は痛いものがある。それなりに高いと金額を出せる出せない以前に「うーん?ちょっと遊ぶには高いからやめよ」と、そもそも止めると言う選択肢も生まれてくる。

 

この記事を書こうと思ったのは、今の日本製品って品質適当だけどまぁ安いから試してみてよ。と、言うユーザー開拓を蔑にし過ぎてないだろうかと思ったからだ。

後述するが、UPQの事件を見たのがその切っ掛けだ。

もちろん性能は間違いないし安心だから、人に勧めるなら絶対に国産にする。性能面でも安心だし、検査品質も極めて高い。不良品率も極めて低い。安心だ。

でもそれは、人に勧められないと買おうとしない層。つまり、レイトマジョリティ層に最適と言う事であって、アーリーアダプタ層やアーリーマジョリティ層に向いているわけではない。アーリーアダプタ層が大好きな、よくわからんけど最新の一点豪華主義。すぐ壊れるけど、その分ポンポン買えるように安い。みたいな商品は、日本の正規ルート市場にはない。

 

 

ガジェット以外だと、例えばバイクがそうだ。若者の車離れと騒がれて久しいが、バイク人口はそれどころの騒ぎではない。

f:id:i10aki:20170502120525g:plain

離れるどころか、むしろ若者は移動手段にバイクを初めから考慮に入れてない。最早「若者のバイク離れ」ではなく「若者のバイク忘れ」と言ったレベルの減少となっている。

世界最高峰レースMotoGPでは、日本車3社が圧倒的な強さとなってかなり長い年月が経っているのに、本国ではお寒い限りである。

原因は警察の過剰な取り締まり、出先で停めるところが無い(バイク用のコインパーキングは極めて少ないが、路駐するともちろん駐禁取られる)、自動車の相対的な低価格化、公共交通の発達、都市部ではクロスバイクのが安くて便利。など、理由を挙げればキリがないが、根本的な理由はメーカーも販売店も利幅と品質確保に躍起になって、若者向けの低廉な商品を販売しなかったからだ。若者が全く買ってない事から明らかだ。

お店に行って諸経費合わせて50万からと言われても、バブル期に比べ給与水準の下がった、今の若い人は買いにくいし、中古の自動車と自転車でいいよ・・・・となる。

 

原材料も人件費も原価自体も上がってるのだから、無いものねだりだろ。そう簡単に値下げ出来たら苦労せんわ!チョイノリみたいの作ったとしてお前は買うのか!と、言われてしまいそうだが、総日本製だったころより、海外生産が進み実は原価は下がっている。そしてそれなりに良いものが割と安い値段で出来る時代なのだ。

解り易い例としてヤマハを例に出してみよう。

YB125と言うバイクがある。

f:id:i10aki:20170502123755j:plain

昔同名のビジネスバイクがあったが、これはヤマハの中国法人が中国で生産している別物。

しびれるほどかっこいい!と言うわけではないが、レトロでそれなりにかっこいい。

おばちゃんスクーターとは全く違うし、ヤマハを例に出したのは、若者に根強い人気のある、SR400になんとなく似てるから比較しやすいと思ったからだ。

f:id:i10aki:20170502123610j:plain

全く違うじゃないか!!ふざけんな!!なんやねんそのクソみたいなホイール!!とか、思う人も多いとは思うが私は許容範囲だと思っている。

なぜならばYB125は16万円で買えるからだ。

f:id:i10aki:20170502124037j:plain

これは販売店が勝手に中国から輸入している逆輸入車で、ヤマハの正規保証はもちろんない。一般にはオススメできるものではない。それでも16.8万円で買えるのだ。若者のアルバイトでも十分手が届く。

f:id:i10aki:20170502124436j:plain

対するSR400は55万円である。諸経費入れたら60万円は超えてくるだろう。

勿論性能は天と地ほど違うし、何より保証がない。検査体制も全く違うだろう。同じ土俵で比べること自体が間違ってる。乱暴な比較である事は判っている。しかし、少なくとも「原価が高騰してるから下がらない」はウソだ。わざわざ現地で買って、コンテナに乗せて、メーカーと違って小口だから決して安くない送料払って、日本のバイク店の利益を乗せても、16万円で売れるバイクは作ることはできるのだ。

口うるさいクレーマーのような過剰品質を求めるユーザーに合わせて、品質を異常に高めた結果60万円でなければ採算が合わなくなったと言うだけだ。

リピーターの「日本製の素晴らしい品質」を求めるユーザーには良いと思うが、とりあえず試してみたいからほどほどでいいよ。と言うユーザーは無視されている。品質確保のために、コストが掛るのは判る。高くても、従来の品質を信頼しているユーザーをガッカリさせてはいけない。それはその通りだ。しかし、リピーターだけしか相手にしない商売もそれはそれで違う。リピーターはいずれ年老いる。年老いるとお客さんではなくなる。そうなると行き詰まる。

比較しやすかっただけで、スズキも中国製でべらぼうに安いものがあるし、ホンダもタイやインドでは安いモデルを出している。CBRもタイから持ってきたらえらい金額が違ってた。スズキもインドでGIXXERは16万円だ。ヤマハを叩いてるわけではないし、スズキもホンダも悪い訳ではない。

16万円のGIXXERが30万円で倍になるのも、品質管理が現地と日本では全く違うからという事情があるのは判る。判るが、だからと言って、日本人全員が潔癖症で一つのキズも不良品もない完璧な製品を求める代わりに倍の値段でいいよ。と思ってる訳ではないだろう。

もし、本当にそうなら、日本に中古車市場は存在しないし、毎週末何万人も集客するアウトレットは商売にならないだろう。多少劣ってても安けりゃいいよ。と思う人は大勢いる。その理由は単にお金がない人もいるし、試してみたいから(練習)とか、道具として使い倒すからとか、いろいろ理由はあると思うが、求める人は必ずいる。

命に直結するから嫌だよ。と、言う意見もある。不安なのはわかるが、スズキはインドではドライバーが死んでもいいと思ってるのか?そんなことはない。ヤマハは中国では人が死んでもいいと思ってるのか?そんなことはない。フレームが折れないなど、最低限人が死なない安全性は世界のどこだって同じだ。

今は自転車で言えば、ロードバイクとママチャリしかない。クロスバイクが無い。

お値段がそれなりに張る、競技と余暇全振りのバイクと、生活特化のママチャリのようなスクーターの2つだけ。ロードバイクに対するクロスバイク。ママチャリに対するクロスバイクがあってもいいじゃないかと思う。

性能は限られるが、ミッションバイクの楽しさを楽しめる。ハマったのならちゃんと良いのを買えばいい。そのまま便利なアシにするでも、お財布へのダメージは大したことない。そんなバイク。そんなのを輸入してくれればいいのに。

 

 

さて、前振りがとんでもなく長くなったが、タイトルの話題である。

UPQ(アップ・キュー)社によるディスプレイスペック詐欺事件。

UPQは「Q-display 4K50」「Q-display 4K50X」「Q-display 4K65 Limited model 2016/17」の3製品について、これまでは「120Hz駆動」と説明していたが、正しくは約半分の「60Hz駆動」だったと発表した。UPQは、商品の返品不可。2000円のAmazonギフト券で対応としたが、同一製品ながら販売元がDMMである(DME-4K50D、DME-4K65D)の2商品については返品を受けつけると言った対応の違いで、大炎上している状況だ。

リフレッシュレートの問題だけではなく、標準ではHDMI 2.0の18Gbpsモードではつながらず、10.2Gbpsの接続となる問題などもある。4K60Pでは色情報を完全な形ではやり取りできない。しかし、デフォルト設定で制限があること、伝送速度を切り替える方法などがマニュアルに記載されていないなどの問題も指摘されており、全体的に検査をしたのかと指摘され炎上している。

 

これから割とUPQ社を擁護する記事を書くが、前提として私はUPQ社はあまり好きではない。単純に製品の完成度がイマイチなのだ。あまり商品は欲しいとは思わない。しかし、完璧な製品を売るメーカーのみが許されると言う、ネットの論調にはどうも賛同し難いのだ。

今回の件でUPQ社のユーザーからの信用は失墜した。大打撃だろう。このまま倒産するかもしれない。そこは企業なので仕方ない。信用を失うのも商品が売れなくなるのも、経営に失敗し会社が倒産すること自体はよくある事なのでなにもUPQ社だけの問題ではないし、言及する必要はない。

しかし、今回の件に関しては、どう見ても安心、完璧が売りのメーカーではないと前々から判っていたにもかかわらず、ユーザー以外の周りが叩き過ぎではないだろうかと思うのだ。Twitter2chでの罵詈雑言はまぁいつもの事としても、例えばPCWatchのこの記事だ。

【ニュースの視点】UPQはディスプレイの仕様誤記についてどう対処すべきだったのか ~ものづくりの姿勢に関する大河原氏、笠原氏、山田氏の視点 - PC Watch

全体的に厳しい論調で書かれており、 メーカーの責任が論じられている。正論だ。間違いはない。

間違いはないが、一点忘れられてることがある。

UPQ社の商品は圧倒的に安いのだ。

もちろん、本当に最安値を狙うなら海外から個人輸入するなど、もっと安い方法はいくらでもある。しかし、国内で個人で買いやすい商品において、UPQ社の商品は最安値の部類に入る。安いから良いだろ?全て許されるだろ?と、言うつもりはないが、UPQ社の商品が安くて完璧なら、もっと高い大手メーカーの商品の存在意義はなくなってしまう。大手メーカーは信頼を売る代わりに、お金はその分取る。

「安かろう悪かろう」と言う言葉を皆忘れてるのではないだろうか。「安かろう悪かろう」はネガティブなワードとして使われるが、ドッグイヤーどころか、ハムスターイヤーレベルの加速度となったITやガジェット界隈においては、「安かろう悪かろう」でも「新しい」だけで十分価値を持つものも多い。粗悪でもどうせ1年も使わない場合も多いからだ。念入りなチェックをしているとあっという間に時代遅れと言うこともある。

スペックが表記を満たしてないなど、リスクはあるけど安い。そういった商品があって良いと思う。そして日本人はもっと価格の意味を考えるべきだと思う。

ちなみに、参考までに中華製品大好きな私だが、120Hz駆動で色の綺麗な4Kが欲しいな。と思った時に買ったのはSONYのテレビだ。勿論中華モニタの3倍いや4倍近くした。それでもリスク回避にお金を使った。価格の意味をちゃんと考えるとそう言う結論になった。

しかし、120Hzはあれば良いけど、無いなら無いで別に。PCモニタ用だし。4K解像度だけでりゃ良いよ。と私が思っていたら、話は変わっていただろう。

だから、UPQ社の商品がなくなるのも困る。そう言う日が来るかもしれないし、今日誰かのその日かもしれない。

だから、安い製品を叩く前に、その価格の意味をよく考えるべきなんだと思う。

価格の結果納得して買う人もいる。その人の選択肢を潰してはならない。